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中村 太一 Taichi Nakamura
「IPIRIA」
2020年9月12日(土) - 10月11日(日)

Gnowee,2020,163×194cm,Oil on canvas


CAVE-AYUMIGALLERYでは2020年9月12日(土)より10月11日(日)まで、当ギャラリーでは2度目となる中村太一の個展「IPIRIA」を開催いたします。
展覧会タイトル「IPIRIA」は、オーストラリアの先住民アボリジナルに伝承される精霊の名前です。 かねてより中村は、環境と人間の共生について思いを寄せ絵画制作を続けてきました。都市周辺の郊外からイメージされる風景を描くことで知られる中村ですが、大学を卒業し作家としての活動を始めた頃開催された個展「Temptation of the landscape」(2011年、UPSTAIRS GALLERY)では、すでに精霊を描いた緑の印象の強い作品を発表しており、画集を通して感銘を受けたというオーストラリアへの強い憧れと、自然、信仰、神話への興味を当時からうかがうことができます。
 アーティストは憧れた土地をしばしば旅します。中村もこの約10年の間に二度のオーストラリアの旅と、滞在制作での展覧会(2019年、Castlemaine State Festival)を経験しました。憧れは実感に変わり、ビクトリア州で過ごした経験が中村の内側まで染み渡り、独特の世界観を強化していた10年と言えます。
オーストラリアには様々な悲しみがあります。そして多文化主義であり、中村もまたそこでは日本人であり少数派でした。 オーストラリアのアボリジナル文化は、5万年前頃からオーストラリアに存在し、地球上で最も古い歴史を持つ現存する文化といわれています。またこの時期は大きな動物が生息していたと推測されています。アボリジナルの文化は、自然への深い敬愛から、大地とそこに住む動物たちと調和を保ちながら生きてきました。
中村はそれらに深く共感し、長い年月を経て今、自らの作品でアボリジナルの神話をテーマに描くことを決めました。信じる心が人を動かし、人々を団結させ、生きる源となることを信じて。 アボリジナルの神話は世界中何処にいようと普遍的なものである事、風景への郷愁は世界中の人類に共通する感覚です。現在、世界中がコロナ渦にあり日本も少しずつ変化していく中でオーストラリアの歴史は重要な教えであるように思います。どのように世界が変わろうと、どこにいようと大切なものは変わらないはずですから。

中村太一 Taichi Nakamura
1982年神奈川県生まれ。2008年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業。キャンバスに油彩、水彩、あるいは紙に水彩で描く具象作品、雑誌の切り抜きの上にアクリル絵具などで自由にストロークを加えたミクストメディアの作品など様々な制作を行う。いずれの作品でもシンボルやメタファーが用いられ、 一貫して、自然の摂理を逸脱することで進歩してきた人間に対する複雑な思いをメッセージに込めている。近年の主な展覧会に個展「project N 73」(東京オペラシティアートギャラリー、2018)、「Under the sky of nowhere」(CAVE-AYUMI GALLERY、2017)、グループ展「Castlemaine State Festival 2019」(The mill、カスルメーン、2019)、「富士の山ビエンナーレ2016」(イケダビル、2016)など。