Nobuyasu Sato 佐藤 修康
“Hand Tree”
2023年10月6日(金)〜10月29日 (日)
※オープニング レセプション: 2023年10月6日(金) 18:00〜20:00

定休日 水・木


(左)手の木#2, 2023, 27.3×19cm, oil on cotton (右)Climate#2, 2023 41×31.8cm, oil on cotton

CAVE-AYUMIGALLERYでは2023年10月6(金)より、佐藤修康の個展『手の木』を開催いたします。本展では新作の絵画作品と、近年制作をはじめた立体作品を発表いたします。ぜひご高覧ください。

「手の木  Hand Tree」 佐藤 修康
水に手を入れる。出来るだけゆっくりと指先から入水することを意識する。指先が水と接触した瞬間、表面張力により水面が歪み、水の感触、温度が伝わる。私と自然が一体となることを体験できる。太陽や風、植物でも私は同じような経験をしている。
十数年その感覚を追求、表現し続けてぼんやりと理解したことがある。それは現象そのものが重要ではないということだった。
物事の捉え方と信じられる何かが自然と一体化する体験の要素になっていること。
量子力学のミクロ世界では異なる性質が同時に存在するらしい。粒と波、生と死が同じ場面で存在していると言うのはなんとも不思議で魅力的なことだ。
私の作品は相反する「私と自然」を同時に表現することなのだと思い至る。

「佐藤 修康展」 中村 太一
佐藤は油絵やセラミックを制作する。彼の作品に共通する美しさは日本の伝統的な民藝にある美しさに共通点を見いだせはしないだろうか。佐藤の油絵における展開の経緯は決して初めから所謂"日本的"なものをたたえていたとは言い難い。しかし近作から30代、20代の作品を振り返ると欧米の作家の影響があるものの、欧米人が作る絵画ではなかった。構造的にはヨーロッパスタイルの絵画に早くから日本人の技巧的な力がミックスされていたのだ。それを可能にさせたのは彼の絵画における構造に対する理解力と数学的な先を読む力、そして世界の構造を自身が噛み砕き解釈する力が長けていたからに他ならない。
20代の渡独を経てその技巧はさらに洗練された。綿布に薄く引いた絵の具は和紙のような風合いを漂わせ、緊張感のある下地の上に記号的な形態が描かれる絵画を制作する。この時期、佐藤は遠くヨーロッパから日本人である事の意味を熟考した時期だったのだろう。帰国後、30代の絵画では色彩や絵画構造のストロークやマテリアルのバリエーションをさらに厳選させた形でのやや難解な絵画を制作してきた。はっきりとした構造が見えづらい中にも作家自身にしか分からないより複雑な計算式が内包されている。モノクロームの画面からは一見するとフォルムを確認できないものから日用品を彷彿とさせる匙や瓶などの形が絵の具の振動を細かく刻みながら儚げに浮かび上がる作品まで幅広い。作家の絵画制作の旅の痕跡が絵画の表層に浮かび上がるのだ。それは近年制作を始めたセラミックの作品に通ずるものがある。丹念に手の感触を伝えるように制作されたセラミック作品は絵画作品と絶えず呼応する形で彼の新たなステージへの息吹を感じさせるのだ。それは日常の中にある何気ない生活の美しさを再確認させるようにそこにある。

佐藤 修康 Nobuyasu Sato
1982年岡山県生まれ、2008年に東京造形大学大学院造形研究科美術専攻領域修了。ドイツ滞在を経て現在は神奈川県在住。近年の主な展覧会に、個展「埋もれ月」(CRISPY EGG Gallery/神奈川、2017) 、グループ展「Field of painting」(東京都美術館/東京個展、2014)、「SUPER OPEN STUDIO 」(REV/神奈川、2013~2022)、「THE COLOR OF FUTURE」(Turner Gallery/東京、2011)、「群馬青年ビエンナーレ2010」(群馬県立近代美術館/群馬、2010)など。